これまで、Sistema Treviso(システーマ・トレヴィーゾ)のねらい、そしてその業務をトレヴィーゾ県の経済システムへ導入するために事業者・人材・経済的資源・財源が行うべきことについての考察を明確に提示しました。ここで、本ポータルを参照しやすいものにするために、この地方の長所、つまり事業者(実業家、勤労者、投資家)がトレヴィーゾに惹かれる基本的要素について簡単にまとめておきます。もちろんこの情報は、地域外の人々(外国人またはイタリア他県民)の選択にも役立つほか、トレヴィーゾ県内に在住する人々が、今後も同地に留まるか、それとも他の地方へ事業や投資を広げるべきかを評価するためにも役立つものです。
実際は、この土地に惹かれる理由としての総合的な分析を行うと、トレヴィーゾの経済に特別優れた点があるわけではないような結果が出ます(過去には記録的結果が出たこともありました)。イタリア国内で活力のある県の大半がそうであるように、現在、生産システムの再構築が進められており、グローバル化に対応するための強化が行われています。しかし、優れたシステムは現に存在しますし、まだそうでないものに関しても、編成と強化が進められています。
たとえポジティブな兆候がみられるものの、まだ完全に実現していないものについてはここでは言及しないことにします。現在顕著に見える現象だけに話をとどめると、次の3点を挙げることができます。
- 広域の貿易と高額の輸出量(年間100億ユーロ、ヴェネト州第2位)、貿易収支の黒字(輸出入: 約60億ユーロでイタリア全体でも上位を占める。外国拠点で生産を行うトレヴィーゾの企業の外国売上高を除いた額。)
- 中規模企業および外国に携わる事業や先進サービス部門の事業全般が好成績を上げている(従業員数50~250人の企業の数-700社以上‐としてはイタリア全体でも上位を占め、ヴェネト州で第位。総合収支分析では、開発力、生産性、利益率の成績が良好。)。
- 外国からの人材と信用資源の流入(外国人居住者および外国人実業家の数‐欧州共同体の加盟国および非加盟国の外国人‐では、ヴェネト州で第1位、イタリア全体でも上位。貸出/預金の比率は2,8でヴェネト州第1位、イタリア全国で第2位。貸出取立遅延率は1,8%でヴェネト州第1位。)
これらに基づき、次の結論を下すことができます。
- イタリア国内よりも国際市場において強い競争力を備えることは、経済発展のための決定的条件であり、これによりイタリア国内市場で反復する経済危機を優にカバーすることができる。世界的需要は、急成長国のめざましい中長期的成長を見込んでいる(不慮の対立や国際的信用の崩落が発生した場合を除く)。
- 中規模企業は、ニッチ的またはセクター的リーダーとして今後ますます力を伸ばし続けると同時に関連事業者全体を巻き込んで推進していく(もしくは、多数の小規模企業が生産鎖から脱落しないために、必然的に革新的で効率的な性格を帯びる)。これらの中規模企業に加えて、生産鎖に属さない無数の小規模企業にも、次の片方または両方の特徴をもつものがある。
- 伝統的部門に携わっていても、外国と関わる業務を日常的に行っている業者。そのため、国際市場での競争力を獲得するために、付加価値重視の生産へ向けて企業の再編成を行っている。これにより生産性が多少劣ることがあるため、本来得られるべきより大きな利益を犠牲にすることもある。
- 大々的な革新活動を実施している業者。この革新とは必ずしも技術的な分野に限るわけではなく、市場組織上のものも含まれる。その結果、国内外を問わず、非常に優れた製品やサービスを提供することのできる業者。
- トレヴィーゾ地域には、移民による外部からの人材(ヨーロッパ共同体外の国々からの人材や、特に技術を持たない人材に限らず)が非常に豊富であり、競争力とバラエティ豊かで協力的な経済の強化に貢献する。それは、さらなる改善を促進し、有能な新しい人材を惹きつけるような雰囲気をいっそう高めるような条件を作り出す。このような雰囲気は、優れた金融制度のおかげでかなり顕著である。金融制度は、県内のシステムに対して貯蓄額を超える融資を行うが、取立遅延率が貸出を下回るため、このような負担を可能となる。
すでにトレヴィーゾの長所は明らかになったはずですが、正式な統計からは、往々にしてそれほど優れた総合結果が出ないことがあります。その理由は次のとおりです。
- 景気変動下では、長期的傾向や経済の構造的状況が明確にはならないこと。
- いずれにせよ、非革新的で非国際的な大きな生産体系層が存在し、景気の変動による障害と国非能率的な内市場と戦いながら、短期的見解に基づく不安定な業務を続けていること。当然のことながら、この層の存在により、トレヴィーゾ経済の全体的実績の平均値は大幅に下がることになる。
しかし、このような状況があるからといって、新しい投資家や勤労者が、自らの優先事項に焦点を合わせて検討した場合にふさわしい選択であるならば、参入を思いとどまることはないのです。投資家や勤労者自身が、必要に応じて、自分にとって最も良い選択をすべく、しっかりとした自己評価を行うことが大切です。
大まかな方向づけのために、トレヴィーゾ県内の生産システム上有力な部門、もしくは上記内容を踏まえた上で優位な状況となる可能性の高い部門を次に示します。
- スポーツ用シューズ
- 木材 - インテリア用品
- 機械加工
- 機械製造
- ブドウ栽培 - ワイン製造
- 農産食品
- ICT(情報通信技術)部門の一部
- 廃棄物処理
- 農業生産(穀物、野菜、畜産)
- ファッション
- プラスチック素材
- 非金属鉱物
- 電気器具
- 企業向け高度サービス
- 個人向け高度サービス
もちろん、イタリア国内の他県同様、トレヴィーゾ県も、イタリアのずさんで非能率的な行政に耐えなければならない立場にあります。この問題を解決するには、イタリアの行政システムの簡略化と連邦制度化が必要となりましょう。さらに、次の点もご考慮ください。
- イタリア東北部の地方行政は、他の地方よりも活発なので、市民と企業の便宜性が比較的良い状況です。
- 行政上の問題とインフラストラクチャーの不足にも関わらず、優秀企業はめざましい業績を上げ、今後もこの状況は続きます。
当地に関心をお持ちの方々へ、最後に一言申し上げておきたいと思います。トレヴィーゾ県には、中長期的成長にふさわしいすべての条件が揃っています。しかし、そのような成長を実現するには、人的資本の向上と革新のための弛まぬ努力が前提となります。手近に安易な利益を手に入れたい方や、短期的結果に目を向ける方には向きません。短期的な結果は、たとえ実現したとしても、時を経ると必然的に失われてしまいます。
Renato Chahinian(レナート・シャニアン) |